「ところで、シェイク様。そろそろ身をかためて跡継ぎのことを考えるべきでは?」
「前も言ったがなぁ、俺にはそんな話はツメの先ほどもないんだよ!」
「陛下からは何も言われないの?」
「しがない伯爵家だからなぁ。これが公爵とかだったら陛下も動くだろうけど――――」
「シェイク!縁談話です!陛下よりのお話です。」
「はぁ、面倒だなぁ。一応会うけど、釣書にはなんて?」
「動物大好き。趣味・乗馬」
……うちには動物のイメージしかないのかよ?
「姿絵とかないんですか?」
「あぁん、ダメダメ。そんなの盛るに決まってるじゃない!「もっと小顔にしろ」とか「もっと美人にしろ」とか何とでもなるからあてになんないわ」
「「そういうもんなんですか」」
「そういうもんよ」
俺もフィルも母さんの迫力に押されてしまった。
見合いの日、とうとうやってきた。ずっと来なければよかったのに―――
「初めましてシェイク・ハノーバーと申します」
「ゴメンなさいねぇ。不愛想な息子で」
悪かったな。
「こちら、フロガキ侯爵家次女でフローラ様でございます」
うん、完全に名前負けだね。姿絵見なくてよかった。
「えーっと、ご趣味は乗馬ということでしたが?愛馬とかいるんですか?」
馬がかわいそうだな。重量負けしそうだ。
「小さい頃より一緒に育った‘アーユ’と言う名の牝馬でございます」
「馬だけが好きなの?」
「……っそういうわけでは!動物全般好きです」
「うちに馬はいないんだよねぇ」
「えっ!?」
うちを何だと思っているんだ?
後日、断りの手紙が来た。母さんにしこたま怒られた。
「フィルー。お見合いに来た子さぁ、完全に名前負けしてるんだよ?そして、重量がありそうで、趣味・乗馬って馬がかわいそうって思ったもん」
「お見合い中にそんなことを考えてたんですか?というか、陛下が持ってきた縁談ですよ?断られたって評判がたっては、ハノーバー家の評判が悪くなります」
「これより悪くなるのか?」
「なかなか言いますね」
「血縁で跡継ぎでもいいし、なんだったらフィル!お前が跡継げよ~!」
「投げやりにならないでください!」